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コラム&解説

定跡解説 #001 Sicilian Najdorf

Sicilian Najdorf 6.Be2 introduction and white plays f2-f4
シシリアンナイドルフの一変化のうちの一変化です

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be2 e5

Atacched File

さて今回はこのナイドルフの6.Be2(Sicilian Defence Najdorf Variation Opocensky Variation)について扱いたいと思います。5...a6でナイドルフとなりますがこれに対して6.Be3,6.Bg5,6.Bc4なども多く指されておりその中で最もポジショナルと言えるのがこの6.Be2です。ちなみに白がBe2とする展開にはClassical Variationと呼ばれることも多くこれもNajdorf Classical Variationとも呼ばれます。6…e6もよく指されますが私は6…e5を使うのでそちらのみとなってます。また私自身主に黒で指すので結構黒視点となっておりますがご了承ください。

まずはこの局面について分析してみましょう。特徴としては

  • 展開は白が3つのピースを展開しているのに対し黒は1つ。
  • センターのポーンは白が1つ、黒が2つで黒の方が多い。
  • 黒はe7-e5と突いたことによりd5が弱まっている。

基本的な戦略としては白も黒もd5のコントロールを目指します。d5に白のピースに居座られると黒としては苦しい展開となります。また黒はその弱点を解消するためにd6-d5ブレークを目指します。このブレークが代償無しに成功すると互角かやや黒良しの展開となります。理由としては黒はe5のポーンが残りセンターの支配が強く指しやすいから、黒のピースが一気にアクティブになるからといったところです。この6.Be2では基本的に両者ショートキャスリングで激しくなる変化が他のナイドルフに比べ少ないので手を暗記するよりも考え方を理解する方が重要です。

では7手目ですが白はナイトを逃がさなければなりませんがどこがいいでしょうか。

一番攻撃的に見えるf5ですが7.Nf5?! d5!=/+ 白はd5を取ることができないので(…Bxf5)黒は上で述べた目標を簡単に達成することができました。

残るはf3とb3ですが圧倒的に7.Nb3の方が多く指されます。7.Nf3も悪手というほどではないのでこちらも見ていきます。

7.Nf3 h6! 白からのNg5(…Be6と展開した後に)やBg5(d5のコントロールを狙う)を防ぎます。この後、黒は自然に展開していくだけです。8.0-0 Be6 9.Re1 Be7 10.h3 0-0 11.Bf1 Nbd7 12.b3 b5 13.Bb2 Qc7 14.a3 Rfc8 (下図)ここから黒は…Nc5や….Qc6からd5突きを狙うというのがよくあるプランです。

Atacched File

15.Qd2 Qc6!

ということで7.Nf3や7.Nf5ではあまり白に有利をもたらす展開になるとは言えません。

ではメインライン7.Nb3に入っていきます。7…Be7! ここは7…Be6ではいけません。7…Be6 8.f4! 次に9.f5が狙いです

8…Qc7  (8…exf4は後で見るように7…Be7よりも劣った局面になります。)

9.g4! この手によりかつてはフィッシャーも好んだ7…Be6はほとんど指されなくなりました。

7.Nb3 Be7 8.0-0 0-0 ここも黒は手順に気を付けなければいけません。といっても白の手を真似するだけですが。8.Be3 0-0 9.g4!?という選択肢が生まれるため8.Be3には8…Be6と返します。参考までに9.g4!?の試合です。Carlsen-Nakamura,TataSteel 2011 http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1604495

Nakamura程のプレイヤーとなれば9.g4に対して何か用意していたのかと思っちゃいますが実際はしばらくナイドルフを指してないうちに忘れていたとのことらしいです。

8.0-0 0-0(図) (9.Be3 Be6)

Atacched File

この図がBe2 Najdorfの基本的な展開です。ここから白にはいくつかのセットアップがあります。

  1. 白がf4と突く9.a4 Be6 10.f4 
  2. 白がexd5とした後でクイーンサイドマジョリティを活かしていく 9.Be3 Be6 10.Nd5
  3. 白がd5のピースによる支配を狙う。
  4. 9.Kh1と f4を突いた時にa7-g1ダイアゴナルからチェックをかけられないように予めキングを避けつつ、黒の出方を伺う(waiting move)。

第1回目は1番についていきます。

白がf4とする場合、図のようなポーンストラクチャーとなります。

Atacched File           Atacched File

黒がe6にビショップを展開している場合f4-f5が脅威となります。そこでexf4とすると右図のようになります。e5のマスからポーンが消えここは黒のナイトやビショップにとって良いアウトポストになりました。またd6の弱点が気になりますがe4のポーンも同じく黒の開いているeファイルで孤立しているので釣り合っているといえるでしょう。

9.a4 Be6 10.f4 exf4!白の黒マスビショップを1回しか動かさせていませんが(Be3-xf4とせずに一回でf4に来た)a4という手で白に1手使わせているので大丈夫です。この手を省略して9.f4と来た場合には9…b5!が強力なカウンターとなります。10.a4 Bb7 でbポーンとeポーンの交換は中盤においてはセンターポーンの多い方が指しやすいので黒としては望むところです。

10.a3 Bb7 11.Bf3 Nbd7 12.Qe1(Be3 Rc8) Rc8 13.Qg3(下図左) のあと13…a5でもいいですし13…Rxc3!? 14.bxc3 Nxe4 15.Qe1 f5(下図右) としても代償十分です。

Atacched File           Atacched File

・ドラゴンでもRxNc3のサクリファイスはよく見られますがナイドルフでは白がキングサイドにキャスリングしていても白のセンターを破壊するために多いサクリファイスです。また白が対シシリアンにショートキャスリング+f4とした場合Qd1-e1-g3(h4)のような動きもよくある形です。

以上により白は9.a4と1手を使わなければなりません(だから7.Nb3 Be6 8.f4! exf4はダメ)。9…Be6 10.f4 exf4 11.Bxf4 黒はd6のポーンが弱くなりますが同じようにe4も弱いので取ってしまって問題ありません。またポーンが消えたことによってe5のマスは黒のピースにとって良いアウトポストと言えます。

11…Nc6 12.Kh1(下図) ナイドルフではクイーンサイドのナイトをd7に展開することが多いですがここではc6に出すのが自然です。ここから黒には二つのアイディアあります。

Atacched File

A)…d5ブレーク B)黒マスビショップを交換する

本やプレイヤーによってどちらを好むか分かれるところです。

A)12…d5

13.e5(13.exd5は黒には何も不満はありません) Nd7 14.Nxd5 Ndxe5 15.c4 Bg5 =(下図) このように黒マスビショップを交換すればほとんどイコールです。16.Bg3 と避けてきたら…Bh4と追い回します。

Atacched File

 

B)12…Rc8 13.Qd2 Ne8!(下図) これが一連のプランの特徴です。f6をビショップのために開けることによってBe7-f6-e5として白のビショップと交換させます。14.Rad1 Bf6 15.Qe3 Be5

Atacched File

16.Bxe5 Nxe5 (下図)このあとe8のナイトをf6に戻せばこれも互角といったところでしょう。

Atacched File

 

ところでこのラインだと15手目に白がBxd6とポーンを取れたことに気づきましたか?しかし15.Bxd6と取るのはあまりよろしくありません。15…Nxd6 16.Qxd6 Qxd6 17.Rxd6 Be5 18.Rd2 Nb4(下図)あたりで黒の方が指しやすくなります。

Atacched File

現在ナイドルフの6.Be2 e5はセオリー的には黒にとってあまり問題はないとされていますがポジションを理解していないと白が局面全体を支配しているということになりやすいです。白の他のプランについてもまた扱っていきたいと思います。

written by minkuru

 

 

 

棋譜集 #001

有名なものや面白いものなど、色々な棋譜を紹介してゆきます。
第1回目は、メルマガでの「あなたの一番好きな対局を教えてください」というアンケートにお答えくださった棋譜を紹介します。


Johannes Zukertort - Adolf Anderssen (1865)

★投稿者様のコメント
世界チャンピオンでも12手で詰まされてしまう、
チェスの恐ろしさを垣間見るゲームだと思います。
短時間で詰まされてしまった時もこれ見ると勇気わきますw


Yakov Estrin - Hans Berliner (1965)

★投稿者様のコメント
これを見るとなぜか今すぐに対局をしたくなる・・・
私のレベルでは難しすぎて何が何だかですがw


Levon Aronian - Viswanathan Anand (2013)

★投稿者様のコメント
今年の試合からです。
中盤のピースサクリファイスがかっこよくAronianをわずか20手くらいで倒すAnandらしいシャープな試合だと思います。


素晴らしい棋譜ばかりです!
ご紹介くださった方々、まことにありがとうございましたm(_ _)m

 

チェス教室 #003 プランニング

来月もエンドゲームになるとか言ってた気がしますが、今回は中盤がテーマです。プラニングの仕方、ある局面でここからどのように進めていくべきかを知るためにどのような考え方をすればいいのか、ということについて書いていこうと思います。
これを書くにあたっては、『How to Reassess Your Chess 4th』や『Chess Training for Budding Champions』を参考にした部分が大きいです。

中盤でのプランの立て方は色々あるのですが、複数の典型的な「質問」を自分に投げかけてみる、というのが1つのいい方法です。そのような、局面の本質を明らかにしていくような質問を列挙していきます。

1、ポーンストラクチャーは?
念のため説明しておくと、ポーンストラクチャーとはポーンの形、つまりポーンが盤上のどこにあるか、ということです。ポーンはチェスの魂と言われるように、ポーン形が中盤のプランを決めるケースがほとんどです。
特にセンターのポーン形ですね。ポーンがなければ自分のピースの働きを良くしていくのが正しいやり方になります。センターがポーンでブロックされていれば、仕掛けるべきはキングサイドorクイーンサイドからです。
ポーン形に応じた正しいプランを選べるようにするためには、このポーン形ならこういう指し方をする、という知識を持っておく必要があります。
自分の経験のみで学ぶのは不可能ではないかもしれませんが、効率が悪いので、ポーン形とそれに応じたプランについて書かれた『Pawn Structure Chess』といった本などを活用していくといいでしょう。
日本語だと、チェス戦略大全の2巻がポーンについて書かれた本です。
少しレベルが高いですが、リアルでもネットでもレートが1500を越えてきたら、しっかり取り組んでみるべき領域だと思います。

2、自分のポジションのいい部分と悪い部分は?
この質問を自分に投げかけて自分のポジションのいい部分(展開が早い、スペースを取っているetc.)と悪い部分(ポーン形が悪い、キングが危険etc.)を明らかにすることで、白と黒のどちらが優勢かがより正確にわかるようになります。
中盤のスタート時点では、どちらが優勢なのか、または互角なのかを正確に理解しておく必要があります。自分が優勢なら自分のポジションのいい部分を伸ばしていくのが正しいやり方になりますし、劣勢なら相手の有利を中和していく(できない場合は別の有利で対抗)
のが正しいやり方になります。

3、盤上から交換して消すべき駒と盤上に残すべき駒は?
これは2と関わる部分が大きいですね。いい働きをしている駒は残すべきですし、働きの悪い駒は交換して消すべきです。
開いた局面でダブルビショップを持っているならそのビショップは両方キープした方がいいですし、自分がバッドビショップを持っているのならその交換を目指した方がいい、ということです。

4、盤のどちら側でプレーするべきか?
相手のポジションの弱点を突いていくのは当然ですが、明確な弱点がない場合でもターゲッティングは重要です。その場合は自分がピースをいい配置にもっていきやすい箇所から攻めていくのが正しいやり方になります。だいたいはスペースアドバンテージを持っている箇所ですね。自分が支配しているスペースが広い方が、ピースの配置も整えやすくなります。また、相手のスペースアドバンテージを中和するために、相手の方が強い箇所に手をつけるのがいい手になる局面もあります。

5、ドリームポジションは?
ドリームポジションとは、盤上に残っている自分の駒の最適な配置のことです。この質問はもし何手でも連続で指せるとしたらどうするか?と言い換えることもできます。ドリームポジションを考える意味は、理想のピースの配置がわかることで具体的な手順もわかってくるというのもありますが、相手のポジションの弱点が理解できる、というのも大きいです。
何手も連続で指せるとしてメイトが見えたりしたなら、それは相手のキング周りが弱点になる可能性があり、そこから仕掛ける手を考えてみるべきだ、ということです。

6、相手は何をしたがっている?
チェスは自分だけがプランを実行していくものではないので、当然相手のプランも考慮しなければなりません。相手がやりたがっていること、プランがわかったのなら、それを邪魔してやるのがいいやり方になります。チェス用語で言うProphylaxis、ってヤツですね。これは攻撃よりも防御が必要な局面で重要度を増す考え方です。

7、全体のプランとその実行における部分的なゴールは?
全体のプランは、まずそれが実行可能かどうかは別にしたドリームポジションの思考法によってある程度決めることができます。この質問は、そのドリームポジションを作るプランが実行可能なのかどうかを詰める質問です。
部分的なゴールを設定し、それをステップバイステップで実行に移せるのならOKですが、時々それが不可能な場合もあるため(ナイトを駒繰りするためのスペースが足りない、相手の狙いがあってピースが縛られドリームポジションに行けないetc.)、夢を現実にするための具体的なステップを明らかにするのは避けては通れません。

8、候補手は?
1〜7をベースにした、次に指す手の選定です。
可能性がありそうな手を列挙し、それぞれ相手の応手も読みながら最善手を導きます。具体的な読みを伴わなければ手として成り立たないため、どんなに単純に見える局面でも読みを外してはいけません。


『Chess Training Budding for Champion』には、この8つの質問が載せられていました。
1と2はプラニングのベース、3〜6、はプランの詰め方、7と8はプランの実行の仕方についての質問になっています。
特にドリームポジションの考え方は重要です。覚えておいてくださいね。
実戦でこの全ての質問を自分に投げかけるのは不可能ですが、こういう考え方があると知っておくだけでも、直感的にプランが見えてきたりします。脳は言語だけで考えてはいないからです。これらの質問に加え、自分のプレースタイルと照らし合わせるのも重要ですね。(これは例えば穏やかに駒繰りする必要のある局面で自分のタクティカルなプレースタイルを優先して
局面のを荒らしにいくということではなく、中盤の分岐点で穏やかにも指せるし激しくも指せるといった局面になった時に自分のプレースタイルに合った方を選ぶ、ということです。
常に優先すべきは、駒が求めてくる指し方です)
局後の検討なら時間もたっぷりあるので、重要な局面で上記の質問全てに答えを出してみるのもいいトレーニングになるかもしれません。トレーニングを積んだプレーヤーは、上記の8つの質問に全て答えたかのような正確な中盤のプランをほんの数秒で思いつきます。そこまで辿りつくのは至難の業ですが、不可能ではありません。自分もまだまだ未熟ですが、少しでもその領域に近づけるように、楽しみながらチェスをしていこうと思います。

written by サシャ

チェス教室 #002 Overlook in Endings Vol.1

色々テーマを考えたのですが、ネットだけではアクセスしにくいエンドゲームの情報を発信してみようということで落ち着きました。
では早速。
 

Atacched File

黒番です。どうすればいいでしょうか?
(1)...g5でポーンを交換する。
(2)...f5で白のポーンを止める。
(3)...Kd6で様子を見る。



1つずつ見ていきましょう。
実際の盤駒を用意しないと読むのが難しいかもしれません。



本譜は1...g5で、これはダメです。
『優勢ならピースを、劣勢ならポーンを交換せよ』というエンドゲームの原則がありますが、具体的な白負けの手順がある以上、従うわけにもいきません。
2. g4!で白に2つ目のパスポーンができてしまい、cポーンとhポーンの両方を止めることはできないため、白勝ちになります。
具体的には、2...hxg4(2...gxh4 gxh5) 3. h5 f5 4. h6 f4...
cポーンを止めればhポーンが、hポーンを止めればcポーンがクイーンになってしまいます。

1...f5もダメです。2. Kd3!で白勝ちになります。
これは少しレベルが高いです。

以下、
2...f4(2... Ke6 3. Kd4 Kd6 4. c5+ Kc6 5. Kc4 Kc7 6. Kd5 Kd7 7. c6+ Kc7 8. Kc5 Kc8 9. Kd6 Kd8 10. c7+ Kc8 11. Kc6はツークツワンクで11...g5以外に手がなく、白勝ち)3. gxf4 Kxf4 4. c5! Ke5 5. Kc4! g5 6. c6 Kd6 7. hxg5 h4 8. g6 h3 9. g7 h2 10. g8=Q h1=Q 11. Qd8+ Ke6 12. Qd7+ Kf6 13. Qd6+ Kg7 14. Qe5+ Kh7 15. c7 白勝ち。

15手も読めるわけないだろという人へ。
エンドゲームは恐ろしいものです。ポーンレースなどは1手読み間違っただけで試合の結果が変わります。そういった局面では一般的な原則よりも、具体的な読みの方が何倍も信用できるものになります。
読まなければいけません。それができなければ、結果を出せません。
この場合なら「クイーンエンディングではcまたはfポーンが7段目にいけば勝ち」という知識があれば、読みを10手目までで済ませることが出来ます。(10手目の時点でc7ができることは自明)
この読みの力は中盤でも役に立つものですし、エンドゲームを勉強することで読みの力を鍛え、チェス全体の地力を上げていくのはとてもいい勉強法です。

というわけで、(3)...Kd6で様子を見る、が正解になります。
白はcポーンを押してくるかもしれませんが、1...Kd6 2. Kd4 Kc6 3. c5 ここで一般的な原則に従い、3...g5でポーンを交換しにいくのが正解です。白のキングがd4にいる状態なら4. g4??は4...gxh4 5. gxh5 h3で黒のhポーンが止まらなくなるため、黒勝ちになります。
そのため白がcポーンを押していくなら4. Kc4 gxh4 5. gxh4 Kc7 6. Kd5 Kd7 7. c6+ Kc7 8. Kc5といった手順を選ぶことになりますが、ここで黒に8...f5があり、fポーンを進めて白キングを反らすことでc6のポーンを取り、キングをh8に動かして白のhポーンを止め、ドローになります。
具体的な手順は、8...f5 9. Kd5 f4 10. Ke4 Kxc6 11. Kxf4 Kd6 12. Kg5 Ke5 13. Kxh5 Kf6 14. Kh6 Kf7 15. Kh7 Kf8 といった感じです。



「複雑」「難しい」「やってられない」という声が多いことでしょうが、面白いと感じてくれる人が1人でもいたなら幸いです。
エンドゲームをしっかり分析することで鍛えられる力は序盤中盤終盤全てに役立つもので、上達への近道と言えます。地道な近道です。
直近では「Amateur to IM」という洋書がヒット作でした。この本はタイトルを見ただけではわかりませんがエンドゲームをテーマにしており、その分析を通してチェス全体の力を上げていこうという本です。エンドゲームに興味を持ったなら、本棚に入れておいていい本だと思います。


もう1つ載せてもよかったのですが、これだけでもエンドゲーム慣れしてない人には重いだろうなと思ったので今回はこのへんで。来月もエンドゲームになる可能性が濃厚です。

written by サシャ

チェス教室 #001 Bishop takes Knight

はじめまして、主に定跡解説や棋譜解説を担当しますサシャと申します。
これからよろしくお願いします!
今回は初回ということで、軽めの記事を書いてみました。
お役に立てば嬉しいです。

●Bishop takes Knight

局面にもよりますが、だいたいビショップとナイトではビショップの方がわずかに強く、自分のナイトと相手のビショップを交換する時よりかは自分のビショップと相手のナイトを交換する時の方がケアが必要だと言われています。
自分だけがダブルビショップを持ち、ある程度局面が開けている(センターにポーンが少なく、ビショップが動きやすい)のであればそれだけでプラスになります。
今回はそんな中でもビショップでナイトを取る交換が定跡のうちにあるものや、それがいい結果を生む例を挙げていきたいと思います。

まずは割とメジャーであろうSveshnikov Sicilianから。

1. e4 c5 2. Nf3 Nc6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5
『d5のマスが弱くなるため避けられていた手でしたが、Sveshnikovの功績もあり現代に復活しました。今やメジャーなシシリアンの1つです。』

6. Ndb5
『知らないとなかなか指せない手ですが、この位置で...d6とさせるのが一番です。戻る手は...Bb4で黒に問題ないとされています。』

6...d6
『6...a6?! 7. Nd6+ Bxd6 8. Qxd6 Qe7 9. Qxe7+ Nxe7 10. Bg5 b5は白がやりやすい局面です。前述の通り、ある程度開けている局面では2ビショップを持っている方が有利なため、ここでは白に分があります。』

7. Bg5
『これが最もよくある手で、狙いはd5のマスの支配を強めるためにf6のナイトを取ってしまうことです。』

7...a6 8. Na3 b5 9. Nd5 Be7 10. Bxf6 Bxf6 11. c3 ...
『9. Bxf6 gxf6と進むこともあります。どちらにしてもd5のマスが焦点になり、白がd5を支配し続けながら黒の...f5からのキングサイドアタックを流し切ろうとする展開になることが多いです。Nc2-a4のつっかけからクイーンサイドで行動を起こすこともできます。白ナイトと黒の黒マスビショップ(黒マスビショップは白マスのd5に利かないため、d5のいい位置にいるナイトをどかすことができない)が残るエンドゲームが白の理想ですが、そう簡単にもいかないため、この定跡が黒でメジャーになっているのでしょう。』

次はSymmetrical Englishから。1つ目の例とよく似ています。

1. c4 c5 2. Nf3 Nc6 3. g3 g6 4. Bg2 Bg7 5. Nc3 e5 6. 0-0 d6 7. a3 Nge7
8. Rb1 a5 9. d3 0-0 10. Bg5 f6 11. Be3 Be6 ...
『10. Bg5がe7のナイトを取りd5の支配を強める目的を持った手で、黒がそれは許さんということで10...f6と応じました。この状態からはなかなか見えにくいですが、黒が10...f6とせずBxe7を許すだけですぐ盤上には現れないにしても局面は白有利に傾きます。少しレベル高めですが、ここらが理解できるようになってきたら立派に中級者です。』

同じようなものをもう1つ見てみましょう。これはChess Lessonsという本にあった局面で、白番です。

Atacched File

ここまでの流れからもう1手目はわかると思いますが、その先も少し手を読んでみてください。
5手目あたりまで読めると100点満点です。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


では答え合わせ。
白のd5のナイトと黒のg7のビショップが残れば、駒の働きから明らかに白が良くなります。g7のビショップ、何もしてないですよね。というわけで、それを強制手順で達成する1. Bxe7! Nxe7 2. Nxe7+ Qxe7 3. Nd2! f5 4. Nb1! Qh4 5. Nc3が正解。
黒はキングサイドアタックに全てを賭けるしかない状況ですが、このような形での黒のキングサイドアタックはc8-h3の斜線を支配する白マスビショップがいないとあまり強くならない(白がh3とした時には...Bxh3の可能性があり、ポーンをf3-g2-h3に置いて..g4突きに備えてきた時にもビショップの利きが...g4突きを助ける。白マスビショップがいないと、このf3-g2-h3の白ポーンの突破が非常に難しい)ため、センターに強力なナイトを置きクイーンサイドから好きなように攻められる白が優勢です。

最後に、黒番での例を載せて今回は終わりにします。

1. d4 Nf6 2. c4 g6 3. Nf3 Bg7 4. g3 d6 5. Bg2 0-0 6. 0-0 Nc6
『黒はd4にプレッシャーをかけつつ、...a6-Rb8でクイーンサイドから反撃しようとしています。』

7. Nc3 a6 8. e4
『ここで最もよくある手は次の黒の手を防ぐ8. h3です。』

8...Bg4
『h3が入らない場合はこの手でf3のナイト取りを狙い、d4に強力なナイトを据えようとします。』

9. h3 Bxf3 10. Bxf3 Nd7
『すぐに10...e5も可能です。f3のナイトを取り除いたことで支配力の弱まった黒マスを攻めていきます。本譜の手もナイトを引き...e5の準備をしつつd4に利きを当てる好手です。』

11. Be3
『11. d5 Nd4は次に...c5で黒のナイトが強く、問題ありません。』

11...e5 12. d5 Nd4 13. Bg2 c5 14. dxc6 bxc6 ...
『ほぼ互角です。』

今回は主にBxf6(Bxf3)を取り扱ってみました。機会があればBxc6(Bxc3)にも触れてみたいと思っています。このBxf6系について言えば、ビショップで相手のナイトを消して支配力の弱まったマスを自分のナイトのために使う、という場合が多いですね。
ビショップとナイトの基本は自分のビショップ(ナイト)に適した局面を作っていくことで、今回はナイトに適した局面を作るためにビショップを使った(消した)わけです。当然逆もありえます。このネタで1冊本が書けるくらいには奥の深いテーマなので完全網羅は難しいですが、読者様の理解の一助になれば幸いです。


written by サシャ

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